夏セミンゴ2018

「このグループに関して」 元は夏セミ2016の中級クラスの部屋です。 ここはディベートに関する資料を適当に貼っていくところです。 ここに書いてあるものは誰でも編集できるので、好きにコピペするなりして使ってください。また、誰でもまだ入ってない人を招待できるので、自大とかで資料見たいって人がいたら好きに招待してあげてください。使えそうだと思ったら、後輩にばらまいてもらっても大丈夫です。 何か質問とか要望があれば、コメントしてちょ。何でも答えるよ!多分!

Chapter.8 Economics - 概論 (1) 夢のような合理性

ぼちぼち忘れてたの思い出したんで、Economicsを書こうと思います。

 

おそらく経済モーションは嫌いな人が多いんじゃないでしょうか?確かにとっつきにくいですが、やって見ると、choiceと似てる議論が多く出てくるので、練習をこなせば「ゆーて他のMotionと似てるな」ってなるんじゃないかと思います。ちょっと長いけど、がんばしょ!

 

 

(1)頭に入れといてほしい「完璧な市場経済」、及び政府と市場の関係

(2)政府はいつ介入するの?その基準

 

 

(1)頭に入れといてほしい「完璧な市場経済」、及び政府と市場の関係

 

経済モーションといえど、大きな対立軸はchoiceの軸と実は変わらなかったりします。

一番よくあるのは、企業や個人が自由にものを売買している状態に対して、政府が規制をかけるものです。Freedom vs state intervention・paternalismの対立軸ですね。

 

では、上に書いた市場経済とは、どういうもので、どういう良いことがあるのでしょうか?

 

市場経済とは、文字通り市場を通じて財・サービスが自由に取引される経済のことです。個人・企業は特定の製品やサービスを作り、好きに値段を設定して、それを気に入った人が買うシステムです。

 

これの利点はなんでしょうか?大きく以下の3点があります。

 

(A)そもそも個人がものを買えて幸せ

(B)競争を通じて、購買層に効用が増える

(C)社会全体が発展する

 

(A)そもそも個人がものを買えて幸せ

 

例えば現状でタバコが400円で売られているとします。Tさんはタバコを吸うことで600円分の幸せを得れると考えています。この状況でAさんがタバコを買った時のHarmとBenefitをCulculateした場合は、タバコを買った時のBenefitがHarmよりも大きいです。よってAさんはタバコを買うという選択をします。

これはいろんなケースで出てくるCost Benefit Analysisですね。

 

しかしここでタバコの税金が上がり、価格が1000円になったらAさんの選択はどうなるでしょう?この状況でAさんがタバコを買った時のHarmとBenefitをCulculateした場合は、タバコを買った時のHarmがBenefitよりも大きいです。よってAさんはタバコを買わないという選択をします。タバコが1000円に値上がりしたことが、タバコを買わないということのIncentiveになったわけです。

 ここでの増税、increase on sin taxはTさんの幸せ度合いを下げてしまうわけです。これを経済学的には効用(Utility)が下がると言いますね。まぁようはHappinessです。

 

そして増税どころか政府が「体に悪いものは禁止!酒もタバコも禁止!」と言ったら、これもまたTさんの200円分の幸せを奪ってしまうわけです。

一般的には、政府は禁止や増税をせず、需要者と供給者が市場で売買をした方が幸せになれるのです。

 

(B)競争を通じて、購買層に効用が増える

 

ここでは、Market Mechanismという単語を覚えてください。マーケットメカニズムとは、市場に任せておけば、需要と供給のバランスは自然に調整されていくという性質という性質のことを指します。需要と供給の働きによってすべての財やサービスの価格体系が決まり、その価格体系に応じて社会全体の生産や消費が調整されると考えます。少し難しいので例を考えましょう。


例えばドコモの携帯電話が異常に高い値段で売られていて、多くの人が必要としているけど買えない状態が続いているとします。そんな時には、AUやクソフトバンクが市場に参入し、同じような携帯電話をA社よりもほんの少しだけ安い値段で提供して、利益を得ようと考えます。すると今度は会社Aもほんの少し値下げをすることで対抗し、最終的には携帯電話が適正な価格で販売されるようになります。結果的に多くの人々は携帯電話を購入することができるようになります。このように、需要と供給のバランスが悪い時には競争が発生することで、自然とバランスが取れるようになっているのが市場の仕組みです。

 

この市場原理、market mechanismの信奉者は、政府が下手に介入して物の値段や数量を決めたりすることなんてしなくても、marketが必要なものを相当の値段で、人々に提供するから大丈夫!政府はfood stampやwelfareであれこれものを配る必要はない!と言います。経済的に右派の人、共和党に投票するアンチ税金の人々が好きな発想ですね。

 

これは従来、中国やソビエト連邦などの共産主義国に対抗する1番のargumentでした。 上記の市場経済(market economy)に対して、政府が物の数や値段を決めて分配する経済のことを計画経済(planned economyと言いますが、計画経済を始めた人々は市場経済が上手く行かなかった歴史を踏まえて計画経済を始めました。

 

しかし、実際には政府の役人が国の全ての人々に対して、所得やニーズを把握し、それらを適切に提供することは土台無理な話でした。結果としてソ連では国民が全く求めていない車のタイヤがいっぱいできたのに、みんなが必要な牛乳やパンは全く足りず、人々が飢えるなんてことが起きてしまったのです。

 

市場経済の利点は、上記にも書いたように競争を通じて、ものが安く、高品質で手に入ることです。同じ価格なら、機能が優れた方を人は買いますし、同じ機能なら安い方を買います。製品をより安く、より高性能になるように企業同士が競争をすることで人々は製品を購入することの効用が増えるわけです。企業の基本原理はprofit seekerです。より多くの人に買ってもらって収入を増やしたいので、頑張るわけです。

 

これについて興味がある人は、市場経済信奉者が崇めるフリードリヒ・ハイエクの「隷従への道」を読んでみてください。おそらく大学の図書館の経済書のところにあるかと。

 

日経BP SHOP|隷従への道

 

(C)社会全体が発展する

 

上記の競争は個々人に大きな利益をもたらすだけではなく、時には社会全体を発展させるような働きをします。例えば製薬会社が競争の結果新しい薬を創薬できれば、人々の命が救われることもあります。パソコンの開発によって、今では多くのデータを容易に集めることができて、それが社会制度の設計や効率的な情報管理、まぁ色々なことに使えるわけです。どこかで災害が起きた際に、テレビやインターネットがあればその情報がすぐに伝わり、すぐに対処・募金を集めることなどができるとかです。

 

上記に書いたことは、言ってしまえば「まぁ考えたらそうだよな」って普通の話が多いです。経済学は基本的には現状を分析する「後追い」の学問なので、当然といえば当然なのですが、上記の原則を頭に入れているかいないかで、ちゃんとdebateができるかがだいぶ変わります。なので、ちゃんと読んでね!

 

 

(2)政府はいつ介入するの?その基準

 

はい、上では「市場経済マジ万歳」なテイストで文章書きましたが、じゃあ政府がほったらかしにして市場に全て任せて良い、というわけではありません。時には市場がdisfunctionalになるときがあり、その時には政府がinterveneする必要があります。

以下の5つのケースが、それに該当します。これらのケースは経済学的にも一般的なものですが、そのケースがまんまdebateのMotionになったりします。覚えておいて損はないよ!

 

(A)独占(Monopoly)が起きるとき

(B)フリーライダー問題

(C)情報の非対称性(Information Asymmetry)が発生するとき

(D)「最低限度の文化的な生活」が保障されないとき

 

(A)独占(Monopoly)が起きるとき

 

choiceのargumentで、人々が選択を行う上で「合理的であり、必要な情報が手に入る」という前提があるように、市場経済にも前提があります。それは「複数企業が競争していて、購買層が商品の情報をきちんと入手できる」ということです。これらが満たされて初めて市場経済の良さが発揮されますが、逆にそれが満たされない時は政府が代わりに経済をコントロールした方がうまく行くことがあります。

 

その一番顕著な例が独占(Monopoly)です。 市場に1つの企業しか存在しない時、当然競争は起きません。この時に何が起きるか考えてみましょう。

企業のinterestはprofitをmaximizeすることなので、財の値段をできる限り釣り上げます。その会社からしかその財は買えないので、かなり割高でも人々はそこからしか買えないわけです。すると、特にそれが人々にとって重要な財(水道や電気など)であった場合、それが買えないことは死活問題になります。

 

この場合は当然競争も起きないし、市場経済は人々に不幸をもたらします。

その際には政府は介入を行います。介入の方法としては、価格規制で値段を下げさせるか、企業を国有化し、profit seekerじゃなくすることです。これによって国が低めの値段で水道や電気を提供できるため、人々は安心して暮らせるようになります。

 

しかし、国有化した方がいいのか?というと、必ずしもそうではありません。

国有化することの欠点としては優秀な人材が入ってこないこと、会社として努力しなくなることがあげられます。

どんだけいい加減な仕事をしても潰れません。赤字になっても、国営企業は税金で補填されるため、倒産を恐れる必要がありません。また営利企業ではなくなるため、優秀な人材を頑張って雇う必要もなく、社内で昇進する人を選ぶ際にも、頑張った人よりも問題を起こさない人、上司と仲良くやれる人が選ばれるでしょう。その環境には本当に優秀な人材は行きません。また国有企業と民間企業が混在している場合、国有企業が提供するサービスが民間企業に劣っていても潰れないので、競争努力もありません

また、これは購買層にも大きな影響を与えます。これは当時言われていて、うちのおとんとおかんも被害にあっていたようですが、今のJRがまだ国鉄だった頃、車掌さんや駅員さんの態度はそれはもう酷いものだったそうです。まぁ愛想良くする必要は一切ないですからね。踏ん反り返ってても自分の収入には悪影響がないですし、会社に文句が来ても潰れません。

 

これの発想をベースにするのが、以下のモーションでしょう。

THBT essential state services (incl. but not limited to water & electricity) should not be privatized(BP Novice 2013 OF)

 

また、これは国内よりは海外の話になりますが、ボリビアコチャバンバの水紛争はかなり有名な例です。知っておいて損はないです。

 

コチャバンバ水紛争 - Wikipedia

 

コチャバンバ水紛争は民営化が悪い事例にはならない: ニュースの社会科学的な裏側

 

また、独占状態(供給する会社が非常に限られている状態)に対して、もう1つの解決策は、価格規制ですね。学年が若いうちから一番良く見るモーションは

 

That we should prohibit price gouging after natural disasters(Australs 2011 R5)

 

とかじゃないかと思われます。

企業・個人は基本的に物の値段を自分で決めて、売買して良いことになっています。通常であれば150円で売っているアクエリアスですが、被災地では他にペットボトルを売っている人は非常に限られます。そこではアクエリアスの稀少性が高まるので、800円とかに値上げをしてもワンチャン売れるわけです。

これに対して、政府が「不当な値上げ禁止!」として、例えば300円以上で売るのを禁止するわけです。個人の自由への規制ですね。

 

マーク・ソーマ 「資本主義を守り抜くには価格システムへの『公平感』を保つことが必要だ ~災害時の『便乗値上げ』の是非を巡る議論から得られる教訓~」(2012年11月28日) — 経済学101

 

【特別授業】サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』を読み解く|道徳の時間|岡田斗司夫|cakes(ケイクス)

 

(B)フリーライダー問題(公共財の問題)

 

もう1つの前提は、「サービスを提供した人がその対価を受け取れて、サービスを受け取った人がその対価をきちんと支払うこと」というのがあります。

ちょっと分かりづらいので、具体例で考えてみましょう。

 

例えばとある企業が国を守るために、軍事兵器を揃えて兵士を育成したとしましょう。

そして「みんなを守ってあげるから、お金を払ってください!」と言ったとしましょう。しかし、戦争が起きるまでは直接的に守られているわけではないので、国民はお金を払うことに同意はしないでしょう。また、ここで「実際に戦争が起きた時に、お金を払った人だけ救います!その他の人々は殺されそうになっても助けません」っていうサービスを提供したとしましょう。これなら一見対価の交換ができそうですが、実際に戦争が起きた時に、戦争の場で「誰がお金を払っていて、払っていないか」なんて絶対に識別できません。また、相手を倒した場合には、国全体が守られるので、お金を払っていない人も恩恵を受けることができます。これをフリーライダー問題と言います。

 

これらを踏まえると、国防や道路、警察による治安の改善などはとても重要なものですが、それを行う企業は必要なお金をうまく集められないですし、収益もあげられません。

この場合は民間企業はやりたがらないので、代わりに政府と国営企業が、国民から強制的にお金をとって、サービスを提供するのです。

 

(C)情報の非対称性(Information Asymmetry)が発生するとき

 

3つ目は、情報の非対称性についてです。

これについては、アカロフのレモンという有名な話があります。少し細かいですが、経済学のニュアンスが多分に含まれているので、頭の体操と思ってぜひ一回読んでみてください。

 

レモン市場 - Wikipedia

 

説明すると冗長になりますが、要は購買層が多数の製品の良し悪しが分からない時、高いものを買うことを避けて真ん中の製品を買ったりすると本当に良い製品が売れないため、粗悪な製品が繁栄してしまうという問題です。

また、サービスの質が分からないとそもそも買いづらくなったり、あとで大きな問題が発生しまう可能性があります。

 

これを防ぐために、政府は色々手を打って情報の透明性(Transparency)を改善しようとします。

一番分かりやすいのは、資格です。弁護士や医者になるには、特定の学歴を必要とする上に、試験に合格する必要があります。これによって、人数を絞る代わりに「この人はきちんと能力を持つ人ですよ!」と伝えることで、情報の透明性を高めるのです。

また薬品に関しては、その安全性と効果の面を相当な期間とお金をかけて、検査をします。しないと販売できません。

これには当然ベネフィットもありますが、ハームもあります。弁護士と医者で言えば人数が相当に限られてしまうため、稀少性が高まって金額が上がってしまいます。能力は若干疑問視されるかもだけど、うちはお金がないから安いお金で弁護士先生に依頼したい!ってのはできないのです。薬品に関しては安全性や効果が確実に担保はされないけど、もしかしたら効くかもしれない薬が世の中に出てくるのがかなり遅れてしまいます。また検査のために要した費用は薬の代金に上乗せされるので、料金も上がってしまいます。

 

これを題材にしたのが、以下のモーションです。


THBT government agencies that regulate drugs should only test whether a drug is safe, not whether it is effective, before approving it for public use
(info: Generally, government agencies responsible for regulating drugs (for example, the Food and Drug Administration, or the European Medicines Agency) require that a new drug pass two different tests before being approved for public use. These separate tests assess whether a drug is 1.safe: does the drug pose an unacceptable health risk? 2.effective: does the drug do what it claims to do?)

(WUDC 2014 R7) 

 

(D)「最低限度の文化的な生活」が保障されないとき

 

これはベタに一番debateで使われる奴かなと思います。

人々にはみんなが大好きな"fundamental human right"が保証されていないと行けません。これには多くのものが含まれます。

生活のためにはお金が必要ですし、学校に行かないと子供は育ちません。そのために政府は企業やお金持ちから税金、特に累進課税でお金をパクります。そしてfood stampやlivelihood protection、あるいはin general social welfareで人々にお金・サービスを配ります。企業は頑張って競争に勝ってお金を設けたのに、そのぶんを政府がパクっていくわけです。特に累進課税は悪く言えば、より成功した企業から多くのお金を奪います。

累進課税成功者への懲罰とdisられるのはこのためです。

そもそも競争の原理は「競争に勝てばよりお金が稼げます!だから頑張って!」です。なのに成功者からより金をパクって行けば、そのincentiveが削がれてしまいます。

 

また教育は私立学校に行ける金持ちの家庭の子供だけでなく、貧困層の家庭の子どもにも提供する必要があります。そのため、公立学校を提供します。実際に公立学校は競争もなく、首にもならず、給料は年功序列ですが、教育という基本的人権を提供するために競争を犠牲にしています

また、働く上では労働者が企業から搾取されないように、最低賃金を設定しています。

仮に労働者が時給1000円分の価値を提供できないとしても、1000円の時給で雇うことはできないのです最低賃金は当然地域によって違いますが)。

しかしこれは、時給600円でもいいから働きたいって人が働けなくなるので、ハームも同時に発生してしまいます。

 

これらのものを題材にしたのが、以下のモーション群です。

 

THBT trade unions and labor protection laws should be suspended during times of economic crisis(BP Novice 2014 Kanto prelim R4)

 

THW abolish minimum wage(どこかは忘れてもうた)

 

THW require large pharmaceutical corporations to invest in unprofitable medicines for rare diseases.(Japan BP 2015 R1)

 

以上です。んで、この市場経済の機能と政府の介入の効果、問題点がより詳しく知りたい人は「是非」「是非」「是非」次の2冊を読んでほしい!

 

資本主義と自由 - ミルトン・フリードマン - Google ブックス

 

不道徳な経済学: 擁護できないものを擁護する - ウォルター・ブロック - Google ブックス

 

両方とも、よくディベート(特に経済モーション)で使われる考え方や題材を扱う本です。両方とも数式などは全く出てこず、普通の大学生であれば理解できるものです。超おすすめなので(ていうか俺が大好きなので)、夏休みで時間がある人は是非読んでいて!今amazon見たら中古が1円から売ってるので(1円って、売る意味あるのかな笑)

ポチっちゃってくださいな。

どっちか読もうかなって人は、下の方が多分読みやすいのと、よりディベートに近いので、下を選んで見てください。

 

そんな感じかな。じゃあの。