Chapter.11 Religion - ケース例 "This House opposes organized religion"
今回はThis House opposes organized religionについて書きます。
昔のワールズのモーションですね。2011年のSFのモーション。
worldsでは両部屋とも動画が上がっているんで、興味のある方は見てみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=BSD7ItrwGV0
聞くのをオススメするのはPMとMO,OWかな。
GFに上がったのはOGとCOです。
WUDC 2011 - Open Semifinals 1 - YouTube
GFに上がったのはOGとCG。圧倒的に聴きやすいのはCG。さすがモナッシュ。
で、このモーションは日本人にはとっつきにくいモーションの1つです。まぁorganized religionが身近じゃないしね。なので闇雲に考え始めてモーションのコアから外れる前に、つまりGovとOppを考える前に、
「Religionとはそもそも何か?What is Religion?」
を考えましょう。このモーションは宗教自体のモーションではないのですが、これはベースとしてきちんと抑えましょう。
世の中には無数とも言える数の宗教があるので、ここではメジャーなものを考えたいと思います。
主なものはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教とかですね。
それぞれ多くの違いはありますが、大体の感じとしては
(1)特定の神の存在、及び教義(tenet/doctrine)があり、その教義に従うことが求められている。キリスト教であれば聖書、イスラム教であればクルアーン。
(2)その教義に従った際には、特定の恩恵が与えられる。例として来世で報われるなど。
などでしょう。
信者が信者になるプロセスは複数あると思いますが、大体思いつくのは
(a)家がキリスト教の家庭で毎日曜日教会に行っていた
(b)何か辛いことがあった時に宗教団体の援助を受け、信者化
などでしょう。
あるいは友人からの勧誘もあるかもしれません。
これらの信者は神を信仰し、教義に基づいて行動をしますが、その中には他人に良いことをするというものが多く含まれます。キリスト教も「隣人を愛せよ」と説いてますし、イスラム教には喜捨(ザカート)の思想があります。
だから協会でホームレスに食事を無料で配ったり、寄付を行ったりします。また、NGOなどを立ち上げてハリケーンなどによって被災した地域やアフリカの紛争地域などに援助を行ったりします。
また、多くの場合「教えを広めよ」といった発想を持つので、宗教勧誘やパンフレットの作成も行います。政治的な活動によって自分たちの基盤を拡大することも行うので、教会でまとまって特定の政党(アメリカであれば共和党ですね)に投票したり、ロビイングを行うこともあります。夏休みにアメリカに行った時は、よくreligionのmotionとかでexampleに使われるエホバの証人がパンフレットを至る所で配ってましたね。
また、宗教団体が学校を持つことは多くあります。宗教的な基盤によって作られた中学校や高校で、特定の方針に従って生徒を育成します。
んで、このディベートをやる上でもいっこ気をつけて欲しいのは、このディベートやると「宗教は他の宗教を排除したりする!」とか「ジハードで人を殺す!」とか言いたくなったりするんですが、それはディベートのコアから外れてしまいます。あくまでoppose "organized" religionであり、oppose religionではないってことです。
GovもOppもreligion自体にはagreeすると思うので、あくまでGovは「組織が悪い」っていうポイントを立てる必要がありますし、Oppは「組織があることが良い。」ってポイントを立てる必要があります。
まぁそれを踏まえて、今回はOppのケースから考えていきましょう。
(1)援助を行いやすくなる。
(2)教えを広めやすくなる。
(3)国のvalueに対抗することができる。
いかにあるポイントは、宗教が良いものという前提の上で、組織のUniquenessを押すことになります。
個人個人が宗教を信じるのではなく、組織として集まることは、どういう良いことがあるでしょう?
(1)援助を行いやすくなる。
一人一人が独自で活動を行うより、宗教団体があったほうが援助をはるかに行いやすいです。
多くの人数が同時に集まって、かつリーダーを決めて統制のとれた仕組みのほうが、食事の無料提供や海外への援助、団体での活動がしやすくなります。
運用するお金も一箇所に集めることが可能になるので、それを資産運用することによって額を増やし、援助に回すことが可能です。
意外かもしれませんが、多くの宗教団体は自分たちの活動拡大のために、信者から集めた寄付を株とか債券に投資してるんですよ。また発展途上国では宗教団体は強い権力とお金を持つので、市が学校を建てれない代わりに学校を建てたりします。これも個々人の集合体では非常に難しかったりするので、団体があったほうが便利ですよね。
逆に個々人が各々の活動を行う上で、善行の積み方が個々人によって違い、それによってうまくいかない可能性があります。
仮に一部の人が「学校を立てることが重要だ!そのためにはまとまったお金を集める必要がある!」と言っても、他の人が「いや、他の国に援助をあげるのが大事だ」とか「いや、改宗に力を入れるべきで、その活動にお金を使うべきだ」などどバラバラに活動を行うと、活動は全て中途半端になってしまい、上手くいかないでしょう。
(2)教えを広めやすくなる。
これも上記と同様で、個々人が頑張ってやるよりは団体がまとまってやったほうがはるかに効率よく、広範囲に手が届きます。
ある程度まとまったお金でプロにパンフレットを作ってもらい、勧誘を手法をきちんと体系的に勉強させて勧誘部隊を作れば、教えをより効率的に広めることができます。
また、大人数の信者を持つ教会ならロビイングの効果も大きくなるでしょう。協会に有利な税制政策(tax exemption on religious institution, such as church)を取ってもらったり、自分たちの思想により近い政策(一番わかりやすいのはabortion禁止)が取られやすくなるでしょう。
まぁ結果、神の意志に対してより報いることができるので信者はそのほうがハッピーだし、来世でより報われると信じることができるでしょう。
(3)グループとして、国のvalue impositionに対抗することができる。
これはどちらかと言うと発展途上国などに起きる問題かと思うのですが、一部の国では政府が宗教に対して敵対的な可能性があります。あるいは先進国でも世俗主義を持つ政府もあります。
それは独裁制であったり、強権的な政府だったりします。あるいは宗教に否定的な共産主義を背景とした政権の可能性もあります。その時に政府としては国民に言うことを聞かせるために自身を崇拝させたり、教育を通じて世俗的な思想を広めたり宗教団体を否定したりします。
その際に、個々人がただ信じて活動を続けるだけでは、国家に対して対抗するのは難しいものがあります。その時にorganized religionが上記で挙げたように集合体として教えを広めることで多くの人に宗教に触れる機会を増やし、時には集合体として国の世俗主義に対抗することもできます。
これの結果として、国が推し進める思想以外の思想を担保することによって、思想の自由の推し進めることに繋がると言えるかと。
HWS Round Robin 2014 Round 2 Room 2 - YouTube
(3)については上記動画のCOが参考になるかと。
それに対してGov。
こちらも宗教は否定しないと言うのが前提なので、組織の何が悪いか?ってのをきちんと考えましょう。
(1)特定の「神の信じ方」がimposeされる。
(2)organizationとして特有の問題が発生し、信仰に悪影響を与える。
(1)まぁこれ言うの結構長くて難しいと思うんですけど
協会ではどう言う風に神を信仰するか、神の言葉をどう言う風に解釈するかっていうものは自分で決めることはなく、教会の偉い人(Priest、祭司様とか)によって決められます。
神との関係性を協会によって規定されるといったほうが良いかもしれません。
これに対してOppからは「いやOppのparadigmではorganized religionもあるけど、そこに属さずに個人だけで信仰することもできるよ。organized religionがあってもよくない?」って言われるかもしれません。
まぁ理論的にはそうなんですが、実際にはそれは難しいケースがあるって言いましょう。多くの場合教会に行くことは日常生活の中で決めることではなく、子供の頃から無意識にいっている等です。一度そこで信仰を持ってしまって、人間関係を築いてしまって、ってなるとそこから抜け出すのは(特に教会の人間関係が大事になってくる田舎では)難しいでしょう。また被災地の人間が一度命を救われた時に誘われたら、まぁ入る可能性は高いでしょう笑
のちに問題が発覚したり「これはもしかしたら違うのではないか、私の持ちたい思想とは違うのではないか」と思ってものちに向けるのは同様に難しいでしょう。
かつ、司祭様は「神との通信」ができる的な立場で、非常に偉い身分です。後ろに神様が付いていますので。この人に意見をして内部の状態を変えて行くっていうのは難しいでしょう。
またこれに対して、Oppが言い返せそうなことは
「特定の思想が押し付けられるかもしれないけど、それはそれでよくないか?多くの信者は自分だけの力で神の思想を解釈し、その解釈に絶対の自信を持てるわけではないだろう。"自分の考え方は、神の言葉に従っているのだろうか?神の言葉の意味を履き違えてはいないだろうか?"って変に悩んで信仰の意味が失われるよりは、きちんと勉強した司祭様が言う言葉に従って、日々を過ごしたほうが神に従っていると感じることができる!しかも周りに同じように信じている人は一杯いるから、そこも安心だよね」って、まぁ信仰がこっちのが良いって言えるかと。
これはyoutubeの方の音源のCO(Oxford)のextentionですね。
(2)organizationに特有の問題が発生する。
基本的に組織というものは、「絶対に」問題を抱えます。
その1つが"腐敗"です。国家を運営する上でも基本的に腐敗、不正は発生してしまうので民主主義は政府の腐敗を防ぐ"Check&Balance System"として導入されていますが、教会には残念ながらそのようなシステムがありません。
協会で起きる問題としては
「カトリック司祭の児童性的虐待」
「司祭が寄付金を間違った方法に使っている問題」
「男性優位問題」
などです。
https://ja.wikipedia.org/…/%E3%82%AB%E3%83%88%E3%83%AA%E3%8…
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/…/11/post-3097.php
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/…/10/post-1671.php
組織には、色々な動画でも言われてますが、structureだったりhierarchyであったりと、一部の人がその他大勢よりも大きな権力を持つことになります。そして、人は権力を乱用することで利益を得ることができるため、不正を行うincentiveが必ず生まれます。さらに宗教団体の場合はそのuniquenessとして偉い人の後ろに「神」がつくので、そのauthorityは絶大になります。かつ、偉い人の言うことを疑うと「お前は神を疑うのか!」とか言われるので、とても疑いづらいことになります。すると問題が起きた時に、とても発覚しづらくなります。
上記のような問題が起きた時に、信者からすると自身の信仰が汚されたことになります。自身の行った寄付が政治的な不正や娯楽に使われていて、世の中の役に一切たってないとしたら?司祭の言葉を信じ続けたのに実は司祭が児童をレイプしまくってる不道徳な人で、その言葉には正当性がないと感じてしまったら?これまでの信仰が傷ついてしまうことになります。
かつ、組織を作るとその社会の価値観が反映されるので、つまり男性が組織の上に立つことになります。男性のみが神と交信できる存在として定義されてしまったり、神の言葉の解釈が非常に「女性軽視」になります。
男性が男性的な目線で言葉の解釈をした結果、女性が必要以上に「教義的」に下の立場になりました。各々が自分で好き勝手に教義の解釈をしていれば、こういう風にはなりづらいでしょう。つまり、自身の幸せのために宗教を信じているはずなのに、宗教団体のせいでその価値が減ってしまいます。特定の信者がとても可哀想って話はできるかと。
そんな感じかな!
じゃあの。